素振り依存症
文田:将来の夢ってあります?
根建:そりゃあプロ野球の選手だろ
文:いまさらかよ
根:なんだよ「いまさら」って
文:普通のプロ野球選手ならそろそろ引退する年だからね
根:夢を持ち続けるのは自由だろ
文:あきらめも肝心だからな
根:お前あきらめきれるのかよ,プロ野球選手
文:今だって野球は大好きだけどさぁ…,あきらめたよ。今は素振りができるだけで幸せだよ。素振りしながら死ねれば本望です
根:なんか変な悟り開いてない?
文:変?
根:「素振りしながら死ねれば本望」って変だろ
文:俺も薄々「変だなぁ〜」って気づいてるんだけどさぁ,素振りってかなり惑溺性があるから,もういい加減やめたほうがいいかなぁって…
根:別に素振りやめなくてもいいだろ。素振りを全面否定してるわけじゃないからね
文:惑溺性あるのに?
根:ないだろ惑溺性なんて
文:お前は日頃素振りしてないから分からないと思うけど,素振りには惑溺性あるからね。俺なんてもう1日に5回は素振りしないと何もできない体になっちゃってるからね
根:どういう体だよ。でも…言ってるわりに少なくない?素振りの回数
文:俺くらいの常習者になると,5回くらいで1日もたせることができるようになるんだよ
根:逆じゃないの?やればやるほど回数増やさないと効かないみたいな。っていうか…「1日もたせる」って何をもたせるんだよ,素振りすることによって
文:とにかく…もう素振りはやめます
根:野球大好きなんだから,素振りやめる必要ないって
文:そんな甘い言葉ささやくのやめろよ。今やめないと,俺もう一生素振りやめられないから
根:素振りしながら死ぬのが人生最後の夢だったんじゃないのかよ
文:いや…それは俺の甘えだ。これまでの俺の人生は,ただただ素振りに依存する…そんな人生だった。俺ほんとにやめるから。だから,これまでの素振りのことは警察には言わないでくれないか。頼む!この通り!
根:言えるわけないだろ。言ったところで警察の人相手にしてくれないからな
文:なんでだよ。犯罪に大きいも小さいもないって言ったのはお前だろ!
根:言ってねぇよそんなこと。それに犯罪じゃないからね
文:とにかく,足を洗うから。あっ…でも素振りだから…手を洗うから…
根:足でいいよ,足で
文:ちゃんと足洗うから。足の裏とか足の指の間とかもちゃんと洗うから
根:「ちゃんと足を洗う」ってそういうことじゃないんだよ
文:あ〜…そうやって言ってるそばから素振りしたくなってきた
根:え?なんだよ大丈夫かよ
文:あ〜…素振りしてぇ〜
根:これあれか?禁断症状ってやつか?
文:あ〜…助けてくれ…
根:どうすりゃいいんだよ。とりあえず素振りしろよ今ここで
文:人前では無理だろ。警察に通報されて逮捕だぞ。漫才中に現行犯逮捕って前代未聞だろ
根:だから素振りは犯罪じゃないから。いいから一回素振りしろって,漫才にならないから
文:あ〜もうだめだ(素振りをする) よし…漫才つづけようか
根:……
文:ほらやろうぜ漫才。1回の素振りで4時間はもつから
根:だから何がもつんだよ。もうさぁ…そんなに素振りしたいんだったら普通に野球やればいいだろ
文:野球はやってるよ
根:やってんの?チームに入って?
文:入ってないけど…
根:なんでだよ。チームに入らないと試合できないだろ
文:チームはまだだろ
根:まだってなんだよ
文:まだドラフトの時期じゃないからね
根:お前ドラフトで指名されると思ってんの?
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