鍋奉行
関:転職を考えてるんですけどね…
山本:漫才の冒頭から漫才師やめるみたいな話やめてもらえます?
関:漫才師やめて鍋奉行になろうかなぁって思ってましてね…
山:鍋奉行になるのに漫才やめる必要ないですからね
関:二つも職を持つことはできないだろ。俺不器用だから
山:お前は器用だよ。それに鍋奉行は職業じゃないですからね
関:お奉行様っていったら職業だろ
山:今の時代にお奉行様なんていないんだよ
関:とにかく鍋奉行になりたいの
山:なればいいだろ
関:簡単に言うなよ
山:簡単になれるだろ
関:何言ってんだよ。鍋っていえば普通4,5人でやるだろ。そのうち鍋奉行が何人いるのか知ってんのか
山:だいたい1人だろ
関:だとしたら,日本の人口約1億3,000万人の中で鍋奉行になれるのはたったの2,600万人だぞ
山:多いのか少ないのかよく分かんないよ
関:少ないに決まってんだろ。俺なろうと思ってんのに全然なれないんだから
山:俺なんてしょっちゅう鍋奉行やってるよ
関:だったらお前のせいだろ!
山:なんでだよ
関:お前がいつも鍋奉行やるから俺は鍋奉行になれないんだろうが
山:入り時間の問題だろ
関:入り時間ってなんだよ
山:鍋をやる場所に何時に入るかってことだよ。お前いつも遅れてくるだろ
関:そんなに遅れてないだろ。7時からだったら,遅くても7時15分には着いてるよ
山:鍋奉行やりたいんだったらもっと早く現場に入れよ
関:現場ってなんだよ
山:鍋をやる部屋のことだろうが
関:お前鍋をやる部屋のことを「現場」って呼んでんのかよ
山:鍋奉行用語だろうが
関:知らないよ。だったらお前の入り時間は何時なんだよ
山:5時
関:早くない?
山:早くないよ
関:2時間も前から現場入りしてんの!?
山:当たり前だろ,鍋奉行なんだから
関:俺の思ってる鍋奉行のイメージと違う…
山:ちゃんと4時から買い物を全部済ませて,5時には現場に入るからね
関:買い物も全部するの?
山:当たり前だろ。お前みたいに7時15分に入ってくるような奴には鍋奉行は務まんないんだよ
関:俺だってほんとは5時には現場に着いてんだからね
山:嘘つくなよ。お前はいつも7時15分にならないと入ってこないだろ
関:だからそれは……鍋奉行になりたいからだろ
山:鍋奉行になりたいんだったら5時に入ってこいよ
関:鍋奉行だったらちょっと遅れて行ったほうがいいのかなって思うだろ
山:なんでだよ
関:お奉行様だからだよ
山:どいういうことだよ
関:偉い人ってなんか知らないけどちょっと遅れて入ってくるだろ
山:重役出勤みたいなこと言ってんの?
関:そうだよそれ!お奉行様だったら後から悠々と入っていかないと威厳が保てないだろ
山:鍋奉行に威厳なんていらないんだよ
関:だから俺はいつも5時に現場に着いて,近くのファミレスとかで2時間くらい時間つぶして,7時15分に現場入りするんだよ
山:だからいつも7時15分ぴったりに来てたの?
関:7時15分になった瞬間に部屋に入るからね
山:だったらお前も5時に現場に入れよ
関:5時に現場入りしたってやることないだろ
山:ダシをとるんだよ
関:2時間もかけて?
山:いいダシとるのに2時間くらい必要なんだよ。だいたいお前こそ2時間もファミレスで何やってんだよ
関:弟子をとるんだよ
山:なんだよそれ。俺が「ダシとる」って言ったからって「弟子とる」ってかぶせるのやめろよ
関:違うよ,本当に弟子をとってんだよ
山:なんで弟子とってるんだよ
関:お奉行様って今で言う「師匠」だろ
山:全然違うわ。役人とかだろ
関:そうなの!? お奉行様って師匠のことだと思ってたからもうとっちゃったよ,弟子
山:何やってんだよ,お前は
関:ちなみにお前は何でダシとってんの?
山:俺は鶏ガラだね
関:お前鶏ガラでだしとるタイプ?俺は人柄で弟子とるタイプだよ
山:師匠!かぶせてくんなよ。鍋奉行の弟子なんてなる奴いないだろ
関:今弟子10人
山:そんなにいるの!? よく集まったな鍋奉行の弟子募集して。しかもファミレスに
関:「師匠,そろそろ鍋奉行の稽古つけてください」ってすっごいメールきてるんだけど,どうしたらいいんだよ俺
山:知らないよ。お前自分も鍋奉行になれてないのに稽古なんてつけらんないだろ
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