藤澤俊輔 「漫才コラム」と「漫才.コント.落語台本集」

漫才作家だけで食べていくために「オチを売るシステム」を模索中。「古典漫才」の普及を目指しフリー台本公開中。時々コントと落語


お問い合わせ・ご依頼はこちらから

名前はまだない

当て書き:サンドウィッチマン富澤たけし / 伊達みきお

 

富澤:最近猫を飼いはじめましてね

伊達:猫はかわいいね。どんな猫ですか?

富:しっぽがついてて,四つん這いで歩くかんじの猫ですね

伊:みんなそうだよ。猫は。何を言ってんだよ

富:どんな猫って言うから…

伊:大きさとか色とかあるだろ

富:あ〜…大きさはこれくらいで,色は無地

伊:無地ってあんまり言わないけどね。白ってことですか?

富:真っ白でかわいいんですよ

伊:名前は?

富:名前はまだないです

伊:じゃあ俺がつけようか

富:なんでだよ。恥ずかしいからやめろよ

伊:なんで恥ずかしいんだよ。俺に名前つけられたら。名前つけるの得意だから。昔そういう仕事してたから

富:猫に名前をつける仕事?そんな仕事あるのかよ

伊:どういう名前がいいの?

富:白猫だから,白がつく名前がいいかな

伊:白がつくね。あとは?

富:すくすくと育ってほしいっていう願いを込めたかんじ?

伊:思いつきました

富:もう!? 早くない?

伊:そういう仕事してたから

富:どういう仕事なんだよその仕事

伊:白ってついて,男らしく元気に育ってほしいという願いを込めて,「白飯」ていうのはどう?

富:メスだよ

伊:メスなの?そういうことは先に言えよ

富:それに「白飯」って米だろ

伊:大丈夫だよ。白飯っていうのはちゃんと炊き上がってる米だから

富:ふっくらと炊き上がってるかとかそういう問題じゃないんだよ

伊:メスだからね。だったら…女の子っぽい名前で,「白」に「美しい」って書いて…「白美」っていうのはどう?

富:嫌だよ,そんな白身魚みたいな響きの名前

伊:何文句ばっかり言って。「白飯」と「白美」以外で白がつく名前っていったら「白ごま」か「白味噌」しか残ってないからね

富:なんで食べ物の名前つけようとするんだよ。猫なのに。お前名前つけなくていいから。妹がつけることになってるから

伊:猫の妹が?

富:俺の妹がだよ。猫の妹って猫だろ

伊:お前の妹ね。妹は名前なんだったっけ?

富:名前はまだないです

伊:まだない?お前の妹生まれたて?

富:38

伊:38歳にもなってなんでまだないんだよ

富:迷ってるんだろうね

伊:迷いすぎだろ

富:名前っていうのは一生を左右するものだから,迷うのも当然でしょ

伊:38年間も名前つけてもらえない時点で人生迷いっぱなしだろ

富:家族で話し合って,とりあえず猫の名前を先につけようってことになったんだよ

伊:まず妹でしょ。お前んちの家族頭おかしいの?

富:まあまあだよ

伊:まあまあおかしいのかよ。妹もいたの?その場に

富:いましたよ

伊:妹も妹だよ。なんで「わたしのを先につけて」って言わないんだよ

富:妹には「名前」っていう概念がないからね

伊:「名前」っていう概念がない?どういうことだよ?でもその妹が猫の名前をつけるだろ

富:だから全然決まらないんだよ

伊:何やってんだよ。猫の名前が決まらないと,妹の方も決まらないんでしょ

富:そこがジレンマだよね

伊:全然ジレンマじゃないわ。名前なんておもいきってつけちゃえばいいんだよ。猫は「タマ」,妹は「花子」でいいだろ。勢いだからこういうのは

富:勝手に決めるなよ。「花子」はうちの母親の名前だから駄目だよ

伊:お母さんとかぶっちゃった?じゃあ「花」でいいだろ

富:「花」は一番下の妹の名前だから駄目だよ

伊:一番下の妹?ちょっと待て。すぐ下の妹のその下の妹にはもう名前がついてんの?

富:あたりまえだろ。もう35だからね

伊:いやいや…38だろ?もう一人の妹は

富:あいつには「名前」っていう概念がないからいいんだよ

伊:だからなんなんだよ…その「名前」っていう概念がないって。大丈夫なの?その妹

富:その妹って?まいのこと言ってんの?

伊:まい?まいって誰だよ?

富:すぐ下の妹だよ

伊:いやいや…すぐ下の妹にはまだ名前ないんじゃないの?

富:名前がまだない?そんな人いるわけないだろ。38にもなって

 

※続きはこちらのnoteを購入するとご覧になれます。

 

 

これはフリーの漫才台本です。ご自由にお使いください。
ご使用の際は,この記事のコメント欄にご一報ください。

 

 

お問い合わせ・ご依頼はこちらから