漆原虎男
漆原:部長!お願いします!辞めさせてください!
部長:えっ?な…何を
漆:仕事をです
部:どうした急に
漆:向いてないんです
部:漆原君,何年になる?この仕事はじめて
漆:ちょうど10年です
部:だろ?10年もやってこれたんだ。向いてないってことはないだろ
漆:ずっと前から気づいてましたよ,向いてないって。だってこの体型ですよ
部:小太りってことか?
漆:小太りなのは自業自得ですから何も文句は言えないですけど……変身した後もこの体型ですよ
部:それは……まぁ気持ちは分かるよ…
漆:変身して登場した時ちょっと笑うんですよ……怪獣が
部:いやそれは……思い出し笑いだろ。怪獣だってたぶんあるだろ思い出し笑いとかなんかそういう……
漆:小太りだからですよ!僕が!ウルトラマンなのに
部:ウルトラマンだって兄弟があんなにいるんだから,一人ぐらい小太りな奴だっているだろ。兄弟全員スマートっていう方が不自然だ
漆:ヒーローですよ。悪い怪獣を倒し地球を救うヒーローはかっこよくないと駄目でしょ
部:いや…でも…君だってこれまで何体もの怪獣を倒し幾度も地球を救ってきたじゃないか
漆:それは…倒しましたけど,跳び蹴りとかできないんですよ僕。こんな体型だから
部:別に跳び蹴りで倒さなきゃいけいないってことはない。パンチとか,そういうのならできるだろ
漆:できますけど,でも結局決め技は……さば折りですよ
部:あぁ…確かにそうだな。なんだかんだと技を繰り出すが結局最後はさば折り,君はいつもそうやって怪獣たちを倒してきた
漆:僕だって飛び蹴りは無理でもかっこよくパンチとかで決めたいですよ。でも……必死で闘った結果……さば折りになっちゃうんですよいつも。こうやってグッて体重かけて…
部:あぁ,その小太りを活かしてね…
漆:だいたいなんで小太りの僕がウルトラマンに選ばれたんですか。おかしいじゃないですか
部:君,なんでウルトラマンに選ばれたか知らないのか?
漆:知らないですよ
部:そんな事も知らないで「向いてない」なんて言ってるのか
漆:え?
部:君は自分のことをなんにも分かってないんだな
漆:どういうことです?