藤澤俊輔 「漫才コラム」と「漫才.コント.落語台本集」

漫才作家だけで食べていくために「オチを売るシステム」を模索中。「古典漫才」の普及を目指しフリー台本公開中。時々コントと落語


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固定が先か 携帯が先か

セールスマン:携帯電話会社の者なんですが,インターネットの新しくてお得なプランが出ましたのでちょっとお話だけでも聞いてもらえませんか?

家の人:あ〜いいです。うちは今のプランで満足してるんで…

セ:少しだけでいいので…

家:今携帯電話会社って言いました?

セ:はい

家:家の電話も詳しいですか?

セ:家の電話ですか?

家:えぇ

セ:あの〜…家の電話って…何ですか?

家:え?家の電話って…固定電話のことですよ

セ:固定電話?…固定されてるんですか?

家:固定されてるっていうか…家から持ち出せないようになってるっていうか…

セ:家から持ち出せないんですか?

家:持ち出せないでしょ固定電話なんだから

セ:何のために固定されてるんですか?

家:何のためっていうかさぁ…

セ:なにで固定されてるんですか?

家:なにでって…そりゃ電話線ですよ

セ:え?それって電話するためのものなんじゃないんですか?

家:……「でんわせん」じゃなくて電話線ね。線,コードコード

セ:電話するのに「でんわせん」ってよくそういう名前をつけましたねぇ

家:僕がつけたわけじゃないですよ。っていうかどっちかというとそっち側の人間でしょ,名前つけたの

セ:私は携帯電話会社の者ですから関係ないですよ

家:っていうか…ほんとに知らないんですか?固定電話

セ:聞いたことないですねぇ…そんな名前の電話。それほんとに固定されてるんですか?

家:だから…固定されてるっていうかさぁ…

セ:線がついてるんですよね

家:そうですよ

セ:わざわざ線をつけて外に持ち出せないようにする意味が分からないんですよね。逃げようとするんですかね,電話が

家:犬のリード的なことじゃないんですよ。外に持ち出せないようにするために線をつけてるわけじゃないの

セ:だったら何のためにつけてるんですか?その線

家:線をつけないと電話が繋がらないでしょ

セ:あ〜お客様,勘違いされてますね。その線は充電の線ですよ。電話繋がりますよ,充電の線をはずしても。もちろん充電が切れてしまった場合は,充電の線をつけたまま電話しないと駄目ですけどね

家:分かってるよ!充電の線と間違えてないよ!っていうかあなたもめちゃくちゃ若いわけじゃないんだから,子どもの頃の家の電話にもついてたでしょ,線が

セ:ついてないですよ,線なんて

家:だったらどんな電話だったんですか?実家の電話

セ:うちの電話は,ショルダーバッグみたいに肩から下げるタイプの電話でしたね

家:それって初期の頃の携帯電話で超高いやつでしょ

セ:当時は移動電話って呼ばれてましたけどね

家:そもそもね,電話っていうのは元々携帯してなかったからこそ,携帯できるようになった電話を携帯電話って呼ぶようになったんでしょ。最初から携帯するものだったらわざわざ携帯電話って呼ばないで,ただの電話って呼ぶでしょ

セ:あ〜なるほど。でもそれなら言わせてもらいますけれども,固定電話っていう言い方は,元々携帯していた電話を何らかの理由があって固定するようになったので固定電話って呼ぶようになったんじゃないですか?最初から固定されていたらわざわざ固定電話なんて言い方する必要がないですからね

家:…だったら固定するようになった何らかの理由って何なんですか?

セ:それは知りませんよ。固定電話って言い出したのはお客様の方ですからね。私はまだ固定電話の存在を信じたわけではありませんよ

家:固定電話っていう言い方は,携帯電話が普及した後に元々あった家の電話のことを固定電話って呼ぶようになったの

セ:なんですかその後出しジャンケン的な論理。その論理だったら私の「携帯電話の方が先説」の説明にも使えますからね

家:卵が先か鶏が先かみたな話に持っていこうとしてますけど,固定電話の方が絶対に先ですからね!

セ:分かりました。お客様がそこまで言うのなら,百歩譲って固定電話というものが昔はあったとします

家:昔はって……今だってありますよ

セ:え?今もあるんですか?

家:ありますよ

セ:どこに?

家:どこにって…,うちにもありますよ

セ:え?そうなんですか!? じゃあお客様は,携帯電話はお持ちではないんですね?

家:持ってますよ

セ:いやでも固定電話を持ってるんじゃ…

家:両方持ってるんですよ,携帯電話と固定電話

セ:そうなんですか!? じゃあ…携帯電話と固定電話というのはどうやって使い分けるんですか?

家:どうやってって…まぁ気分とかですよ

セ:オシャレってことですか?

家:いや別に気分でネイルの色を変えるとかそいうことじゃないですよ

セ:じゃあどういう気分の時に固定電話を使われるんですか?

家:いやぁあの〜…気分っていう言い方はちょっと不適切でした。大抵は近くにある方を使うんですよ

セ:あ〜なるほど。本当はソースをかけたかったんだけど,近くに醤油しかないから醤油でいいや的なかんじですか?

家:いや違……まぁそんなかんじですよ

セ:そうしますと,携帯電話と固定電話,どちらがソースでどちらが醤油なんですか?

家:知りませんよそんなこと。それはあなたが言い出した例えでしょ

セ:でもその固定電話を固定しておくためには,毎月それなりの料金がかかるんじゃないですか?

家:固定しておくためのお金がどうか知りませんけど,そりゃかかりますよ,基本料金が

セ:携帯電話があるのにわざわざお金を払ってまで固定電話を持つ意味はどこにあるんですか?

家:意味っていうか…昔から使ってたからその流れで繋いでるだけですよ

セ:失礼ですが,お客様は気分とか流れでしか使わないようなものに毎月一定のお金を支払うほどのお金持ちなんですか?

家:ほんと失礼ですよあなた。別に大して金持ちでもないですけどね…

セ:お金持ちの方が道楽で固定電話を持っているというのならそれは自由ですけれども,そういうわけではないというのであれば,節約した方がいいんじゃないかと思いまして…

家:大きなお世話ですよ!まぁ確かにあなたの言う通りですけど…

セ:じゃあここは思い切って,固定電話解約しちゃいましょう!

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