自分たちが一番楽しんでいる漫才
例えばある二人の人が,悪ふざけで漫才をしている場合,これは「自分たちが一番楽しんでいる漫才」ではなく,「自分たちだけが楽しんでいる漫才(のようなもの)」です。まじめであればあるほど,漫才は面白くなります。漫才に「悪ふざけ」が入り込む余地はありません。
「自分たちが一番楽しんでいる漫才」とは,見ている人たちも十分楽しんでいるのですが,それ以上に自分たちが楽しんでいる漫才のことです。二人がどこまでも真剣に向き合い,その場の空気と相方のアドリブを心から楽しむ,このような種類の楽しみ方は,まじめでなければできませんし,まじめであればあるほど「楽しい」と感じます。本人たちが感じている「喜び」は客席にも熱として伝わり,見ている人も心から「楽しい」と感じます。でも,そこで笑っている誰よりも,「自分たちが一番楽しい」と感じながら漫才をする,そのような漫才師は実に漫才師らしいと思います。