ボクの妻と結婚してください。
「こういうときふつうはサッカーを見るんだろうな…」と思いながら,普段ほとんど見ることのない映画を見ました。
サッカーは大好きで,フットサルなら自分でもやるし,ワールドカップもNHKの素晴らしいアプリの「戦術カメラ」を使い,念願の縦画面で見ています。サッカーは選手と同じ縦目線で見るのが主流になればいいのに…
ヨーロッパのチーム(特にフランスとイングランド)が好きなので,日本代表の試合は通常見たり見なかったり。まさか勝つなんて思わなかったし…
もしかしたらサッカーよりも好きかもしれないのが,織田裕二さん。最近はドラマ出演も少ないので,どうしても見たかったのが「ボクの妻と結婚してください。」。織田さんは笑顔がいいですね。映画の中でも「あの人懐っこい笑顔が…」というセリフがあったと思いますが,「まさにそれ!」って思いました。
今回織田さんが演じていたのは,「余命半年」と宣告された放送作家。残されることになる家族のために結婚相手を探すという「最後の企画」を実行するというお話。
「死」を「テレビ的な企画」という感覚で描いていることに批判的な反応もかなりありますし,「身勝手すぎる」という意見もあります。確かに身勝手な行動ではありますが,それを成立させているのが,主人公の「まじめさ」「真剣さ」「本気度」だと思います。おかしなやり方ではあっても,妻や子どものことを本気で考え,本気で愛し,まじめに生きている。それが伝わるから,周りの人は理解を示してくれたのではなかと…
漫才も,「まじめさ」「真剣さ」「本気度」が大切だと思います。ふざけていたり,世の中をなめていたり,見下したりするような気持ちがあると,あまりいい「笑い」は生まれません。
映画の中で,放送作家は「世の中の出来事を『楽しい』に変換する仕事」と言っていたと思います。「なんでも笑いに換えればいい」とは思いませんし,「泣きながら生きる」ことも大切だと思います。でも,物事の否定的な部分だけを見てしまう傾向はだれにでもあるので,違う角度から見て「変換する」という表現はすごくいいなと思いました。
それと,主人公が「なんでガンになってしまったのか」を自分で考えているシーンで,「何をすれば良かったんだろう。何をしなければ良かったんだろう」とノートに書きながら泣いていたのが,わたしの中では一番印象的でした。これが…ほんとにそのときは分からないんですよね…後にならないと…
今,何をすればいいんだろう…,何をしないほうがいいだろう…
もしもいい相方と巡り会えたなら…
もう何年も前になりますが,地元の温泉施設にかなりりっぱなステージがあり,そこで漫才をしていました。と言っても,温泉での漫才は結局何回かしかできず,事情があり相方は引っ越してしまい,あれ以来漫才はしていません。
その後も漫才作家としては細々と活動をつづけていますが,やっぱり…漫才がしたい…
漫才の良いところは,ふたりでやることによっておもしろさが2倍ではなく,何倍にもなること。
漫才の悪いところは,ふたりじゃないとできないから,自分の意志だけでは必ずしも漫才をつづけられないこと。
もしもいい相方と巡り会えたなら,大切にしてほしいと思います。
緊張を克服する方法
伊達:私事なんですけどね,最近ちょくちょくセミナーを開催してるんですよ
富澤:セミナーやってんの?その風貌で?
伊:確かにこの風貌だと怪しいセミナーみたいなかんじするけど,すごいまじめなセミナーだから
富:どんなセミナー?
伊:「緊張を克服する方法を教える」っていうね…
富:普段から舞台に立ってますからね,その経験を活かしてセミナーをやっていると
伊:ただねぇ,そのセミナーで話をするのがめちゃくちゃ緊張するんですよ
富:だったらダメだろそのセミナー
伊:でも俺漫才のときは緊張しないから,その方法を教えてるんですよ
富:それなら俺が,「セミナーで緊張しない方法」を教えてあげますよ
伊:お前が?でも…お前今緊張してるだろ
富:え?俺?……緊張してますよ
伊:じゃあ無理だろ
富:なんで?
伊:だって今緊張してるんでしょ?
富:ガッチガチに緊張してます
伊:漫才でガッチガチに緊張してるお前が「緊張しない方法」なんて教えられないでしょ
富:俺が教えるのは,「セミナーで緊張しない方法」だから
伊:セミナー限定の方法ってこと?
富:「セミナーにおける緊張」に特化した方法だから
伊:その方法,漫才の時には通用しないの?
富:漫才の時には全然通用しない。俺今ガッチガチに緊張してるから
伊:それにお前普段セミナーやってないでしょ
富:やってないですよ
伊:やってないんなら「セミナーで緊張しない方法」を知ってるわけがないでしょ
富:セミナーをやってる人から聞いた方法だから
伊:実際に効果がある方法を聞いたのね
富:しかも,それ言ってた奴すごいうさんくさい奴だったから,試しにやってみたんですよ
伊:セミナーを?
富:開催しましたよ,人生初セミナー
伊:緊張しただろ
富:めちゃくちゃ緊張した
伊:どういう人が来たの?
富: まず,主婦の方
伊:女性をターゲットにした内容だったのかな
富:それから,学生
伊:学生?大学生とか?
富:小学生
伊:小学生!?
富:そして,3歳の男の子
伊:家族だろ!
富:以上です
伊:「以上です」じゃないよ。それお前んちの家族でしょ。奥さんと子供二人
富:いいでしょ別に,試しに開いたセミナーなんだから
伊:それ「セミナー」って言うのかどうかが微妙だよ。で,なんで家族の前でめちゃくちゃ緊張してんの?
富:初めての「セミナー」は誰だって緊張するだろ。「では,これからセ…セ…セミ…セミ…セミ…」
伊:「セミナー」すら言えない状態だったの?
富:緊張しすぎて「セミ」しか言えない状態だったんですけどね,それでも毎週続けましたよ,セミナーを
伊:毎週やれば慣れてきて,そんな緊張しなくなりますからね
富:「では,これからセ…セ…セミ…セミ…セミ…」しか言えない状態が3ヶ月続き…
伊:3ヶ月も!? 3ヶ月間ずっと「セミセミセミセミ」言ってたんですか?家族の前で?
富:そして3ヶ月が過ぎたあの日,ついに!「セミナー」って言えたんですよ!あの日のことは一生忘れないね。うちのお風呂場には割れんばかりの拍手が鳴り響き…
伊:どこでセミナーやってんだよ。声がよく響くから風呂場を選んだのか?
富:俺も家族も大号泣。そんな感動と共に実証された「緊張克服法」を,いまだにセミナーで緊張してしまうお前に教えてあげようと思ってるわけですよ
伊:今俺のことちょっと見下しただろ。お前「緊張を克服した」って言ってるけど,ただ「セミナー」って言えるようになっただけでしょ?
富:「セミナー」って言えさえすれば,セミナーなんてもう終わったも同然でしょ
伊:なんだと思ってるんだよ「セミナー」を。バカにしてるでしょ,セミナーを
富:バカにしてないよ。俺はお前のために,わざわざ自宅の風呂場で「セミナー」を始めて,3ヶ月間にも渡って家族の前で「セミセミセミセミ」言うという恥をさらしてまでこの「緊張克服法」が実用的かどうかを試したんだからな
伊:分かりました。じゃあ一応聞きますから,富澤さんおすすめの「セミナーで緊張しない方法」ね
富:「一応」ってなんだよ
伊:ちゃんと聞きますから
富:え~では,今日は私が実践し成功した緊張克服法の中から,2つの方法を伝授したいと思います
伊:よろしくお願いします
富:まず1つ目は,セミナーで話し始めて「緊張しているな~」と感じた時には,「私今緊張してます」って声に出して言っちゃうという方法ですね
伊:それでお前漫才の冒頭「ガッチガチに緊張してます」って連呼してたの?
富:それ言うなよ。漫才の最中にこっそり緊張をほぐそうとしてたのがバレるだろ
伊:まぁいいじゃないですか。連呼することによって緊張が和らいだんでしょ?
富:全然和らいでないです
伊:まだ緊張してんの?
富:ガッチガチに緊張してます
伊:全然効果ないじゃないですか,この方法
富:だから,「この方法は漫才の時には全然通用しない」って言っただろ
伊:だったらセミナーの時も通用しないでしょ
富:セミナーの時には絶対に通用します!
伊:どっから来るんだよ,その自信は
富:「セミ」しか言えなかった俺が,「セミナー」って言えるようになりましたから,この方法で
伊:それを自信満々に語れるメンタルの方がすごいと思うけどねぇ
富:え~2つ目の方法ですが,手を握る
伊:手を握る?誰の?
富:できれば,自分が信頼している相手に手を握ってもらうのがいいですね
伊:セミナーの最中に?
富:歌手もよくやってるじゃないですか。歌いながら客席に降りていってお客さんと握手しながら歌うあれですよ
伊:あれ緊張をほぐすためにやってんの?
富:そうですよ。しかも!「ファンサービスしてるんだなぁ,気さくでいい人だなぁ」って思ってもらえて一石二鳥ですからね
伊:でもセミナーであれやったらおかしいでしょ
富:マイク持って話をしながら握手して回ればいいじゃないですか
伊:絶対嫌がられますよ。恥ずかしいし。なんなんだよ,このまったく役立たない方法は
富:いやだって言ってたんですよ,「この方法がいい」って。セミナーやってるうさんくさい奴が
伊:俺だろ,その「セミナーやってるうさんくさい奴」って
富:え?これお前が言ってた方法?
伊:俺がお前に教えたやつだよ
富:「セミナーやってるうさんくさい奴から聞いた」っていうことしか覚えてない
伊:「うさんくさい」って言い過ぎだよ。これね,他にもいくつか方法ありますけど,「あがり症・不安感・マイナス思考が改善できる」っていう,俺がやってるセミナーのテーマなんですよ
富:このまったく役に立たない「緊張しない方法」を編み出したのお前なの?
伊:「まったく役に立たない」って言うなよ。役立ちますよ。お前の理解の仕方がおかしいだけだから
富:理解の仕方ってなんだよ
伊:例えば…,「ガッチガチに緊張してます」って連呼すれば緊張が和らぐって思ってるでしょ
富:だって…声に出して言った方がいいんでしょ?
伊:重要なのは,「緊張を受け入れる」ってことですからね。「緊張してる。まずいな…どうしよう…」って思うんじゃなくて,「私緊張してます」って言うことで受け入れる
富:ただ連呼すればいいんじゃないの?
伊:ただ連呼しても無駄です
富:じゃあ…手を握るっていうあれは?
伊:あれは,本番が始まる前に,信頼できる人に手を握ってもらうと安心するっていう方法ですよ
富:本番中じゃないの?
伊:本番中に手を握るとおかしなことになるでしょ。お前いろいろ間違って覚えてるからね
富:ちなみにこれって…,漫才の緊張を克服するのにも有効なの?
伊:有効ですよ。すでに緊張ほぐれてきてるでしょ?
富:ガッチガチに緊張してます
伊:もしかして向いてないの?漫才
富:実は…そうなんだよねぇ…
伊:いやいや…本気で落ち込むなよ。緊張を克服する他の方法もあるから
富:それを教えてください
伊:体を動かす方法だと,屈伸をする
富:こんなかんじ?(やってみる)
伊:それから…,腕立て伏せをする
富:腕立てね(やってみる)
伊:あとは,気合を入れる
富:気合だ!気合だ!気合だ!気合だ!
伊:まぁ…いいですよそれでも。それから,失敗してもOKと言い聞かせる
富:すべってもOK!すべっても気にしない!
伊:ちょっと開き直りすぎですけど…まぁいいや。どう?緊張ほぐれて落ち着いてきた?
富:全然落ち着かない。めちゃくちゃ緊張してる。役に立たないんじゃないの?この方法
伊:そんなことないわ。こうなったら…今までの全部やるしかない
富:全部!?
伊:緊張を受け入れる
富:ガッチガチに緊張してます
伊:(「緊張を受け入れる・手を握る・屈伸をする・腕立て伏せをする・気合を入れる・失敗をしてもOKと言い聞かせる」をランダムで言う)
富:(それに合わせてリアクションを取る)
伊:こんだけやれば落ち着いたでしょ
富:こんだけ動いて落ち着くわけなけないだろ
伊:でももう緊張してないでしょ
富:この心臓のバクバクが,緊張によるものなのか,激しい運動によるものなか,よく分からない状態だよ。もう漫才終わりにしよう。そしたらどちらにしろ緊張から解放されるから
伊:ダメだよ。緊張を克服してないんだったら,漫才終われないだろ
富:なんでだよ
伊:落ち着かない(オチつかない)と,漫才は終わらない
これはフリーの漫才台本です。ご自由にお使いください。
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