藤澤俊輔 「漫才コラム」と「漫才.コント.落語台本集」

漫才作家だけで食べていくために「オチを売るシステム」を模索中。「古典漫才」の普及を目指しフリー台本公開中。時々コントと落語

note販売中
「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 [¥10,000]
「しゃべくり漫才台本(ネタ)の書き方」と「オチのつけ方」 [¥6,000]

「台本のご依頼」と「当て書きリクエスト」は こちら から

ひきにげ

この台本は,キッズクラブにきている小5の男の子が書いた漫才台本を手直ししたものです。今その子とこの台本で漫才の練習をしています。

 

A:最近はまっていることがあるんですよ

B:なんですか?

A:「ひきにげ」

B:ダメでしょひき逃げは

A:楽しいじゃないですか「ひきにげ」って。ただねぇ…まだ下手なんですよ

B:そんなのうまくならなくていいですから

A:家で練習してても気持ちが乗らないじゃないですか

B:家で練習!? どうやってやるんですかひき逃げの練習って。やめた方がいいですよ,練習なんて

A:さっきも一回やってきたんですよ。ぶつけ本番で

B:ひき逃げからの漫才ってこと!? 「ぶつけ本番」で人にぶつけてきたってことですよねぇ

A:人にぶつける?何を?

B:「何を」って…車をですよ。人に車をぶつけて逃げてきたんでしょ?

A:そんなわけないでしょ

B:だって「ひき逃げにはまってる」って…

A:そっちの「ひき逃げ」じゃないですよ。犯罪でしょ

B:でも他に「ひき逃げ」なんてないでしょ

A:僕が言ってるのは,家電量販店とかに行ってピアノで一曲弾いて逃げてくる「弾き逃げ」ですよ

B:そっちの弾き逃げ?ピアノ弾く方の?でもピアノ下手なんですよねぇ

A:めちゃくちゃ下手ですよ。下手すぎて聴いてる人みんな死にそうになりますから

B:どんだけ下手なんですか。それ微妙に犯罪なんじゃないですか?

A:僕も「微妙に犯罪なんじゃないかなぁ…」って思ったので,逃げてきました

B:僕の知ってる「弾き逃げ」とちょっと違いますけど…,普通はちゃんと家で練習してからやるんですよ

A:「練習しない方がいい」って言ってませんでした?

B:だからそれは,人を車でひく方の「ひき逃げ」の練習ね

A:実は練習はしてるんですよ。ピアノ弾く方の「弾き逃げ」のね

B:してるんですか?どんな練習?

A:ピアノのフタをものすごい速さで閉めて,ものすごい速さで立ち去るっていう

B:それ逃げる練習でしょ?

A:「弾き逃げ」だから逃げる練習大事じゃないですか

B:逃げる練習いります?弾く練習は?

A:してないです

B:なんでしないんですか。弾く練習してくださいよ

A:逃げる練習が先でしょ

B:弾く練習が先だよ。弾いてから逃げるんですよ,弾き逃げというものは

A:弾くのはいいです。弾く練習大変だし

B:「弾くのはいいです」って…,弾かないんだったらただの「逃げ」ですよ。全然「弾き逃げ」にはまってないじゃないですか

A:ちゃんとはまってますよ。逃げることに

B:弾くことからね

 

 

これはフリーの漫才台本です。ご自由にお使いください。
ご使用の際は,この記事のコメント欄にご一報ください。

 

 

レターポットによって漫才作家だけで食べていける可能性が…

キングコング西野亮廣さんがリリースした新仮想通貨レターポット」を上手に活用すれば,漫才作家だけで食べていける可能性があるように思います。

レターポットは文字がお金になっているので,フリー台本を使っていただいた方や読んでいただいた方やその他応援してくださる方から,それぞれの思いをレター」にして送っていただくことが可能です。

ただし,受け取ったレターは今のところ換金できません。たぶん,今後も換金できるシステムは導入されないと思いますし,導入しない方がむしろ長続きすると思います。「換金できないならそれで食べていくことはできないじゃないか」と思われるかもしれませんが,「レターポット」のコンセプトを理解していれば,「食べていける可能性は十分にある」と感じると思います。

 

レターポット」を活用して漫才作家だけで食べていくためには,「古典漫才」というジャンルを確立する必要があると思います。古典落語のように,「同じネタを様々な演者がそれぞれの個性を活かして演じる」というエキサイティングなあのシステムです。

ネタはみんなのもので,誰でも演じることができ,演じてくださる方やそれを見て評価してくださる方や作家を応援してくださる方がいれば,レターを送ってくださるかもしれません。

漫才作家レターポット」はとても相性が良さそうです。

 

これを実現するために必要なことを書き出してみます。

□話の筋とオチがしっかりとした台本を書き,フリー台本として公開する

古典落語のように同じネタを様々な演者がそれぞれの個性を活かして演じる」という考えに賛同してくださる漫才師の方を増やす

一般の方にも気軽に漫才をしてもらえるような環境を作り,フリー台本の利用者を増やす

□台本をそのまま演じるのではなく,自分たちなりにアレンジして演じる喜びを見出してもらえるようレクチャーする

 

まだまだ他にもできることがあると思います。何かアイデアなどありましたらぜひ教えてください! 

 

多忙な株式仲買人のロマンス

当て書き:サンドウィッチマン富澤たけし / 伊達みきお

 

伊達:世の中忙しい人っていっぱいいますけどね,一番忙しいのは株の取引をしている証券会社の人だよね

富澤:間違いないね

伊:ここか,富澤証券。なんか緊張するなこういうとこ入るの

富:そんなことより,証券会社の人がなんであんなに忙しいのかという話ですよ。株の取引っていうのは時間との戦いですからね,どうしても…

伊:ちょっと待てって

富:えっ?

伊:どうした?

富:何が?

伊:俺今ちょうど富澤証券に入ろうとしてろ

富:富澤証券ってなんだよ

伊:証券会社の名前だよ

富:お前漫才の最中に証券会社に行こうとしてたの?

伊:そういうコントだろ

富:漫才だろこれ

伊:分かってるよ。漫才だけどコントなんだよ

富:漫才だけどコント?何その哲学的な発言

伊:全然哲学的じゃないわ。俺らの漫才だいたいそうだろ。「世の中で一番興奮するのは〜だよね」って俺が言って,「間違いないね」ってお前が言って,コントに入るっていう

富:ちょっと何言ってるか分からない

伊:なんでだよ。これまでずっとこのスタイルでやってきただろ

富:昔はもう少し痩せてましたけどね

伊:そっちのスタイルじゃねぇよ。「漫才始まったらすぐコントに入ってただろ」って言ってんの

富:ちょっと思い出せない…

伊:こういうのに「思い出せない」とかある?

富:そもそも漫才の王道はしゃべくりですからね

伊:分かってるよ。俺らそういうのできないから漫才コントから始めて,最近はしゃべくりもできるようになってきたんだよ

富:漫才コントなんてやめた方がいいですよ。ちゃんとしゃべくりやんないと。しかも証券会社の漫才コントなんて絶対おもしろくないでしょ

伊:お前が言うなよ。俺らこれまで散々漫才コントやってきただろ。それに,お前が証券会社の漫才コントの台本書いてきたんだからな。俺だって「証券会社の漫才コントってなんだよ。全然おもしろくねぇな」って思ったけど,お前が「どうしてもやりたい」って言うから今日やることになったんだぞ。それも忘れたの?

富:ちょっと思い出せない…

伊:本気で言ってんの?じゃあ今日これからどうすんの?

富:これから?仕事終わったら今日はまっすぐ帰るよ

伊:予定聞いてんじゃないんだよ。お前今やろうとしている証券会社の漫才コントも忘れちゃったんだろ?

富:証券会社の漫才コントなんて書いた記憶すらない

伊:だから「この後漫才どうすんだよ」って聞いてんの

富:(笑)「この後漫才どうすんだよ」って(笑)漫才の最中に聞いちゃ駄目だろ

伊:お前のせいだよ

富:俺のせいなの?

伊:あたりまえだろ。お前がネタ忘れたからだろ

富:そういうことなら…,俺が責任を取りますよ

伊:どうやって責任取るんだよ

富:証券会社の漫才コントは思い出せないけど,めちゃくちゃ忙しい証券会社の人の話ならできるから,その話しますよ

伊:お前証券会社の人の話なんて知ってんの?

富:俺の友人で証券会社に勤めてるやつがいますから

伊:お前の友人で?同級生の中にたまたま優秀なやつがいて証券会社に就職したのかな

富:ハーヴェイ・マクスウェルっていうやつなんですけどね

伊:外国人!? 絶対お前の同級生じゃないだろ

富:マクスウェルは株の取引でそれはもう忙しい生活を送ってましてね,仕事の時は「人間」っていうよりもう「機械」みたいなんですよ。うなりをあげて回転する歯車と勢いよく弾けるぜんまいで動く多忙きわまりない「証券マン」という名の機械

伊:だいぶ言い回しがかっこいいけど,そんなにすごいの?そのマクスウェルさんって人は

富:とにかく仕事はものすごくよくできるやつなんだけど,欠点があるんですよ

伊:まぁまぁ人は誰しも欠点の一つや二つありますからね

富:仕事に熱中しすぎて,それ以外のことをすぐ忘れちゃうっていうっていうね

伊:それお前だろ

富:俺そこまで仕事に熱中しすぎてないだろ

伊:だからだろ。だからネタ忘れるんだよ

富:マクスウェルの物忘れ具合は俺よりももっとひどいから

伊:お前の物忘れよりもひどいの?

富:マクスウェルにはレズリーという女性のアシスタントがいて,一年くらい一緒に働いてたんだけど,事情があって仕事をやめることになったんですよ

伊:アシスタントのレズリーさんが?

富:それで,「次のアシスタントをよこしてほしい」って紹介所に頼んだら,早速次の日に来たんですよ

伊:「働かせてほしい」っていう人がね

富:その時マクスウェルは秘書にこう言ったの

伊:なんて言ったんですか?

富:「僕がなぜそんなことを頼まなくちゃならないんだ?ミス・レズリーが来てくれてからこの一年,仕事ぶりに不満を持ったことなど一度もない。彼女が辞めると言い出さない限り,仕事は彼女に任せる。紹介所に連絡して募集を取り消しておくように。これ以上こういう人に押しかけて来られてはかなわない」

伊:レズリーさんが辞めるということをすっかり忘れてたの!?

富:しかも,「紹介所の頼んでおいてくれ」って自分で指示したことも忘れてますからね

伊:重症だなそれは。お前の物忘れと同じくらいひどいわ

富:まだ続きがあるから。絶対マクスウェルの物忘れの方がひどいから

伊:これよりさらにひどい物忘れがあるの?

富:その日の昼休みですよ

伊:株式市場の昼休憩ね

富:ふわぁ〜といい香りがしてきてね

伊:うなぎの蒲焼か何かの匂いかな

富:アメリカの話だから

伊:じゃあ何の蒲焼?

富:「いい匂い=蒲焼」っていう短絡的な発想やめろよ

伊:じゃあなんの匂いなんだよ

富:ほのかに甘いライラックの香り

伊:ライラックって…おしゃれだな。競走馬でしょ

富:花だよ。キタサンブラックと間違えてるだろ

伊:間違えてねぇよ。いそうだだろ,ライラックっていう名前の馬も

富:だとしてもお昼に競走馬の匂いがしてくる証券会社っておかしいから

伊:ライラックっていう花ね。花の匂いがしてきたの?

富:実はそれは,隣の部屋にいるアシスタントのレズリーさんの香りでね…

伊:急に恋の話の匂いがしてきたな

富:仕事人間のマクスウェルでも,いや,仕事の人間のマクスウェルだからこそ,これまで気持ちよく一緒に仕事をしてきたレズリーさんのことをいつの間にか好きになってたんだろうけど,何しろ仕事が忙しくて忙しくて…

伊:恋愛のことを考える余裕もないくらいの状態だったわけね

富:ところがこの日,ほのかに甘いライラックの香りをかいだ瞬間マクスウェルはこう思ったんですよ

伊:なんて思ったの?

富:「この機を逃してどうする?今言おう。今まで何をぐずぐずしてたんだ…」。そして,カバーに入るショートストッパーのような素早さで隣の部屋に飛び込んだマクスウェルはまっすぐにレズリーさんのデスクまで突き進みこう言ったんだよ

伊:なんて?

富:「あまり時間がないんだが,そのあまりない時間の間に話したいことがある。僕の妻になってもらえないだろうか?」

伊:いきなり?単刀直入するぎるけどね

富:「世間一般の手続きを踏んで求婚する時間がなかった。でも,僕の気持ちに嘘はない。心から君を愛してる。黙ってないでなんとか言ってくれ,今すぐ。頼む。こうしてる間にも,ユニオン・パシフィックの株価が大暴落しかけてるんだから」

伊:株の取引をしてる人はそういう感覚なのかな?で?レズリーさんの反応は?

富:最初はあっけに取られ,それから,驚きに大きく見開いた目から涙がこぼれ落ち,やがて涙の間から晴れやかな笑みが浮かびあがった

伊:ちょっと複雑な反応のようにも見えるけど,うれし涙を流したってこと?

富:それから彼女はこう言ったんだよ。「わかったわ,やっと。いつものようにお仕事に夢中になりすぎたのね。それで,しばらくの間,ほかのことをすっかり忘れちゃったのね。最初はびっくりしたわ。もう,びっくりしたなんてもんじゃないぐらい。ハーヴェイ,覚えてらっしゃらない?わたしたち,昨夜の8時にあの角の小さな教会で結婚したのよ」

伊:えっ…ちょっと待って。結婚したことも忘れてたの!?

富:俺よりひどい物忘れでしょ

伊:それはお前よりひどいわ。じゃあレズリーさんは「結婚したことも忘れちゃったの!?」っていう驚きと悲しみとやるせなさの涙ってこと!?

富:まぁ最初はね。でも最後は「晴れやかな笑み」 を浮かべてたからね

伊:マクスウェルさんの「本気で好きだ」という気持ちが改めて伝わったのかもしれないね

富:もうあまりネタの持ち時間がないんだが,そのあまりない時間の間に話したいことがある

伊:え?なんだよ急に

富:僕の相方になってもらえないだろうか?

※オチはこちらのnoteを購入するとご覧になれます。

 

題材:多忙な株式仲買人のロマンス / O.ヘンリー
   The Romance of a Busy Broker / O.Henry

 

これはフリーの漫才台本です。ご自由にお使いください。
ご使用の際は,この記事のコメント欄にご一報ください。

 

 

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