藤澤俊輔 「漫才コラム」と「漫才.コント.落語台本集」

漫才作家だけで食べていくために「オチを売るシステム」を模索中。「古典漫才」の普及を目指しフリー台本公開中。時々コントと落語


お問い合わせ・ご依頼はこちらから

三四郎の漫才におけるメインは相田さんだと思う

三四郎は,小宮浩信さんが注目されていて,相田周二さんは「三四郎のサブ」とか「じゃない方芸人」などと言われたりもしています。小宮さんの方がバラエティなどで重宝されるというのは分かりますが,三四郎の漫才においてはむしろ相田さんがメインなのではないかとわたしは思います。

それは,「三四郎の漫才では相田さんがボケの場合が多い」という単純な理由からではなく,相田さんが持っている雰囲気ゆえです。 あの独特の落ち着いた雰囲気です。

 

小宮さんは言葉選びのセンスがずば抜けたツッコミで力を発揮していますが,小宮さんの雰囲気は本来漫才向きではないと思います。相田さんのあの落ち着いた雰囲気がなければ,「ただのおもしろい素人漫才」という評価しか得られなかった可能性もあります。そんな三四郎の漫才を「漫才」として成立させているのが相田さんだと思います。あの落ち着いた雰囲気は,出そうと思って出せるものではありません。相田さんが「持っているもの」なのだと思います。

落ち着いた雰囲気だからこそかなり自由なボケをしても漫才としてまとまりますし,ちゃんとツッコミもできる相田さん。もっと評価されてもいいと思うのですが…

 

マンゴーVSマンゴー味

当て書き:プラス・マイナス(兼光タカシ / 岩橋良昌

 

兼光:「好きな果物ってなんですか?」って聞かれたとき,「マンゴーです」っていつも答えてたんですけど,この間久々に本物のマンゴーを食べたら「あれ?そうでもない」って思いまして,よ〜く考えてみたら,マンゴーが好きなんじゃなくて,マンゴー味(マンゴーあじ)が好きだってことに気づいたんですよ

岩橋:あ~それ分かる。 プリンとかガムとかね,マンゴー味のものを食べた時,「あれ?これ本物のマンゴーより美味しくない?」って思ったことありますよ

兼:最近のマンゴー味はマンゴーを超えたんじゃないかなんて言われてましてね…

岩:「マンゴーを超えた」はちょっと言い過ぎじゃないですか?

兼:そういう意見もあるんですよ。良くないことですけどね

岩:ええことやん。企業努力によってマンゴー味がどんどん美味しくなってるってことやろ?

兼:例えていうなら,「コロッケさんが美川さんを超えちゃった」みたいなことですからね

岩:そう言われると微妙やな

兼:しかもマンゴーを超えたからって最近調子に乗ってましてね,マンゴー味が…

関:マンゴー味が調子に乗るとかあります?

兼:美川さんのおかげでコロッケさんのモノマネがあるわけやから,コロッケさんはそれをわきまえないと駄目じゃないですか

岩:コロッケさんは美川さんをはじめモノマネをしている歌手のことをものすごい尊敬してますもんねぇ

兼:それに引き換えマンゴー味ときたら,マンゴーのおかげでマンゴー味があるってことを忘れてね,「俺マンゴー超えたから」とか言ってるじゃないですか

岩:言うてはいないやろ

兼:俺にはそう言うてるように聞こえる。だからもうマンゴー味のものを食べる気がしないんですよ

岩:でもそれはマンゴー味がより美味しくなってるってことやろ。ならむしろ食べたいやん

兼:お前それはコロッケさんが美川さんの「さそり座の女」を歌うときにこう言うてるようなもんやぞ。「俺,美川憲一超えた。聞いてくれ,さそり座の女

岩:最低ですねぇそれは

兼:「もうコロッケのモノマネなんて見たくない」って思うやろ?

岩:それは思うわ

兼:同じことや

岩:同じことかな

兼:しかもマンゴー味は,マンゴーよりも安定感があるもんだから余計に調子に乗ってますからね

岩:マンゴー味の安定感って何?

兼:マンゴーは生き物だから,味がいい年と悪い年があったり,美味しいものもあればそうでもないものもあるじゃないですか

岩:それはありますねぇ。それに比べてマンゴー味は生き物じゃないから,いつも同じ美味しさを保てるという意味で安定していると…

兼:そういうことですよ。だから,一回マンゴーを超えたらずっと安定してマンゴーよりも上の味をキープできるって思って威張ってんねんて,マンゴー味の野郎は

岩:さっきの例えでいうとね,美川さんは生き物だからのどの調子がいい時もあれば悪い時もあるけど,コロッケさんは生き物じゃないから安定してるってことやろ。なのに威張らないところがコロッケさんの素晴らしいところですよね

兼:何を言うてんねん。コロッケさんは生き物や

岩:ロボットちゃうの?

兼:ロボットちゃうわ。あれは「五木ロボ」っていうコロッケさんのネタや

岩:あれ本物のロボットやん

兼:お前コロッケさんのこと本物のロボットやと思ってたんか

岩:とにかくお前は,「マンゴー味もコロッケさんを見習って謙虚に生きてほしい」って言いたいんやろ?

兼:そうなんやけど,たぶんこのまま放っておくと,マンゴー味はもっと調子に乗ってマンゴーをつぶしにかかると思うんですよ

岩:マンゴーをつぶしにかかったらマンゴージュースになるんちゃう?

兼:何を呑気なこと言ってんねん。マンゴー味はすでに良からぬことを考えてますからね

岩:良からぬことって何?

兼:マンゴーの暗殺ですよ

岩:マンゴーの暗殺?

兼:マンゴーの存在さえなくなれば,自分がマンゴーの座に君臨できると思ってるんですよマンゴー味は

岩:安い回転寿しのネタみたいなことですか?代用の違う魚なのに「まぐろ」って呼ばれてるネタとか実際にありますからね

兼:それアカマンボウやろ。本物のまぐろがいなくなればそいつが「まぐろ」の二代目を襲名することになるんじゃないですか?順番からいって

岩:襲名って…,そんな落語家みたいなシステムになってんの?じゃあマンゴー味もマンゴーの二代目を襲名しようと思ってるんじゃないですか?

兼:襲名するんならええねんて。マンゴー師匠から「二代目としてマンゴーの名を継いでくれ」とかなんとか言われてな

岩:ちゃんとした手順を踏んでますからね

兼:マンゴー味はそういう手順を踏むことなく,マンゴーを暗殺してでもマンゴーの座を奪おうとしてねん

岩:そんなに調子乗ってます?マンゴー味

兼:調子乗ってるじゃないですか。ジュースやゼリーでは飽き足らず,キットカットやミルキー,そしてあのピノにまで手出してますからね,マンゴー味は

岩:手出してるわけやないけどね。だいたいねぇ,マンゴー師匠がこの世の中からなって一番困るんはマンゴー味自身ですからね。マンゴー師匠を暗殺したりはしないでしょ

兼:そういうことさえも分からなくなるほどおごり高ぶってんねんて,今のマンゴー味は

岩:ほんまにそんなことなってんの?最近のマンゴー味は?ほんならマンゴー味の性根を叩き直さんとあかんやん

兼:そのためにもマンゴーにはもっとがんばってもらわないと駄目じゃないですか?

岩:マンゴーががんばるんですか?

兼:あたりまえやろ。他に誰ががんばんねん

岩:マンゴー農家の人とかねぇ…

兼:マンゴー農家の人はもう十分がんばってるやろ

岩:そうやけど,マンゴーがピンチなんやからマンゴー農家の人ががんばるしかないじゃないですか

兼:お前十分がんばってる人捕まえて「もっとがんばれ!」って言って追い詰めるタイプやろ

岩:だったらどないしたらええねん

兼:だから,もっとマンゴー自身ががんばるしかないねんて

岩:マンゴー自身ががんばるってどういうことやねん

兼:自分のことは自分で考えろや

岩:俺マンゴーちゃうわ

兼:お前マンゴーやろ

岩:マンゴーそっくりな体型してるだけや

兼:ほな,マンゴーそっくりなお前と,マンゴーが大好きな俺で,なんとかしよや

岩:なんとかって…どうやって?

兼:いい作戦があんねん

岩:なんですか?

兼:マンゴー味には大抵マンゴー果汁が使われてるから,「マンゴー味サイドにマンゴー果汁を一切渡さないようにする」という作戦や

岩:兵糧攻めか。マンゴー果汁がないとマンゴー味作れませんからね。そうすればマンゴー味サイドも,「マンゴーのおかげで自分たちがあるんだってことを思い出して反省するかもしれない」って…いい作戦じゃないですか

兼:反省したマンゴー味はマンゴー師匠のところに謝りに来るわけや。「申し訳ありませんでした。調子に乗ってました。マンゴーあってのマンゴー味だということを思い知りました」ってな。で,謝罪のためにマンゴー味が頭を下げた瞬間にボコボコにする

岩:何してんねん。ボコボコってやりすぎやろ。謝りにきてるんやからそこはちょっと諭して許してあげてくださいよ

兼:さすが。言うことが違いますね,師匠は

岩:だから俺マンゴー師匠ちゃうって

兼:見るからにマンゴー師匠じゃないですか

岩:見た目はまさにマンゴー師匠やけど,マンゴー師匠ちゃいますよ

兼:本物のマンゴー師匠なら,マンゴー味が謝りに来たらちょっと諭して許すと思います?

岩:マンゴー師匠なら許しますよ。人格者ですから,マンゴー師匠は

兼:どんなかんじですか?

岩:じゃあちょっと俺マンゴー師匠やってみるから,謝りに来て

※オチはこちらのnoteを購入するとご覧になれます。

 

 

 

これはフリーの漫才台本です。ご自由にお使いください。
ご使用の際は,この記事のコメント欄にご一報ください。

 
 

最強の漫才師はプラス・マイナスなのでは?

最近プラス・マイナスの漫才を見ていてよく思うのは,「プラス・マイナスが最強なのでは?」ということです。

プラス・マイナスの兼光タカシさんと岩橋良昌さんは,二人とも,しゃべれて,ボケもツッコミもできて,芸達者。オール阪神・巨人さん以来じゃないでしょうか?こんなにも対等な関係で漫才ができる二人というのは。今のこの二人なら,たぶんどんなネタでもやれると思います。もしかしたら,オール阪神・巨人横山やすし・西川きよし夢路いとし・喜味こいしを超える,本当の意味での最強の漫才師になれるかもしれない,そんな気さえしています。

 

そんなお二人を見ていて一番心配しているのは,「売れてしまう」ことです。プラス・マイナスは以前から注目されていたものの,「売れそうで売れない」というポジションゆえに,これまでずっと漫才に打ち込むことができました。だからこそ,今の漫才があるのだと思います。

売れても漫才をメインに活動できるなら,何も問題はありません。テレビでの様々な仕事をすべて漫才に昇華することができるからです。でも,売れて漫才をしなくなる(もしくはできなくなる)コンビがたくさんいるので,どうしても不安に感じてしまいます。

 

プラス・マイナスのお二人には,「本当の意味での最強の漫才師」を目指して,これからも漫才をメインに活動していただきたいと強く願います。どうか,よろしくお願いいたします。

 

お問い合わせ・ご依頼はこちらから